今回の宿泊研修は、実施の前週の3月11日(金)に、東北地方太平洋沖地震が発生し、東日本の広域に甚大な被害がもたらされたことから、実施の適否について関係者で協議の結果、次のような考えに立ち、訪問施設等のご理解もいただいたうえで、予定どおり実施することにしました。(以下、里親学生支援室長から里親GP登録学生等へ実施前日に配信された電子メールの文面)
「里親」宿泊研修の実施について
3月11日の「東北関東大震災」のあまりにも痛ましい状況に発する言葉がみつかりません。
お亡くなりになった方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された方々に心からお見舞い申し上げます。
ところで、明日からの「里親」宿泊研修についてです。
中止も検討しましたが、「里親」宿泊研修の目的が観光ではなく、地域を理解し、地域の医療の大切さを学生が理解することを目的とした研修であることを重視し、予定通り実施することといたしました。また、医師や事務職員を災害支援のために派遣し、厳しい職員体制で診療を行っている診療所からは、困難はあっても予定通り受け入れてくれる旨の申し出もありました。
大災害に見舞われている現地で、住民の命を支えるために、また、身内の死をご家族が受け入れることができるよう必死で働いている専門職集団の一つが医療職です。
将来の医療の担い手である学生たちとそうした医療人の責務を学び、滋賀の医療を平時だけでなく非常時でも支えることができる医療体制について考える機会にしたいと思います。
里親学生支援室長
垰田 和史
「大津市西部地区・草津方面の医療と歴史・文化を学ぶ」と題し、3月15日(火)〜16日(水)の2日間、宿泊研修を実施しました。
バスでの出発に際し、垰田室長の発声により、震災でお亡くなりになった方々のご冥福を祈り全員で黙祷を捧げました。
1日目は、滋賀県立精神医療センター・近江草津徳洲会病院・草津総合病院を外観見学の後、世界文化遺産に登録されている比叡山延暦寺へと向かいました。
到着後は、まず阿弥陀堂へ。室員で解剖学講座准教授の相見先生から、毎年5月にこのお堂で営まれる滋賀医科大学の解剖体納骨慰霊法要の様子などの説明を受けました。また、1200年間守り継がれた「不滅の法灯」で知られる、国宝・根本中堂も拝観しました。
比叡山延暦寺阿弥陀堂
根本中堂
昼食の後は、山道を30分程度歩き、献体いただいた方々の分骨された御遺骨が納骨されている横川の大学霊安墓地へ向かいました。ここでは参加者全員で草取り・落ち葉かき・溝掃除など清掃作業を行い、最後に黙祷を捧げて下山しました。
その後は2班に分かれて、坂本民主診療所とケアタウンからさきの訪問でした。
坂本民主診療所には、医学科3年の4名、看護学科2年の3名と引率の教職員3名の計10名で訪問しました。まず、併設されている介護老人保健施設・日和の里を訪問し、1階にある100円喫茶で、診療所開設30周年を記念して作成されたDVDの映像を基に、垰田施設長から、診療所の沿革や概要についてご説明いただきました。その後、出崎副施設長と福塚医学生担当のお二人に、2階と3階にある入所施設や通所リハビリエリアをご案内いただき、地域や家庭の結びつきを大切に運営されていること等についてご説明いただきました。続いて、診療所に移動し、多目的ホールや外来エリアをご案内いただき、地域の保健医療センター的な役割を果たされていることを感じました。最後に、徒歩で在宅ケアステーション・コスモスを訪れ、看護師の方々から24時間体制で在宅介護を支えておられること等について説明を受けました。いずれの施設も明るい家庭的な雰囲気で、周辺住民の皆様から信頼されていることが感じ取れました。
ケアタウンからさきでは、扇田在宅部長より老人介護を中心にご説明いただき三大介護、介護保険などを含め、大津市にしかないサービス自助・互助・共助についてもお話いただきました。交流会第1部で講演をお願いしていた越智先生のお名前もあがり、ケアタウンからさきはとても信頼しておられるようでした。
また、石橋ケアマネージャーからは、「歳をとるということ」のお話を伺いました。
その後、扇田在宅部長に院内を案内していただき、ご自慢の檜風呂をはじめ食堂や交流スペースを見学させていただきました。
バスを待つ十数分も学生たちは、扇田在宅部長を囲み、介護などの話をしていました。
宿泊場所でもある琵琶湖グランドホテルでの交流会では、第1部として、おち医院 院長の越智眞一先生に「大津地域の医療」というテーマで地域における医療活動の実情等ご講演いただきました。
まずは自己紹介として、開業されてから現在に至る診療のこと、続いて、大津市医師会の会長としてのお仕事のこと、そして大津市の地域医療として、公的病院・私立病院・開業医などそれぞれの役割や連携についてご講演いただきました。
交流会第2部では、訪問先の副院長や滋賀医大卒業の先輩方、病院関係の方、里親・プチ里親・学外室員の方々など13名の方にご参加いただき、それぞれのお立場からのご意見を伺い、学生たちも質問や自分の意見発表をするなど貴重な情報交換・交流の場となりました。
また、途中、学生の提案により、今回の大震災で亡くなられた方々へ黙祷を捧げる場面もありました。
2日目の最初は、時折雪の舞う中、近江八景の一つ堅田の落雁として有名な浮御堂の見学でした。湖上通船の安全を発願し建立されたそうです。
その後、ボランティアガイドの方たちの案内で、日吉・坂本地区を散策しました。全国三千余社の山王さんの総本宮・日吉大社や穴太衆積みの石垣と白壁に囲まれた延暦寺門跡寺院・滋賀院門跡など歴史と文化を感じることができました。
午後からは、前日同様2班に分かれ、大津市民病院と大津赤十字病院を訪問しました。
大津市民病院では、片岡院長のご挨拶のあと、地域医療連携室の松井次長に院内を案内していただきました。感染症病棟では、施設はあっても利用が無い方がいいとおっしゃっておられました。またヘリポート見学は、はじめての学生もおり驚きの声が上がっていました。その後、透析室では11期生の磯野先生(血液浄化部診療部長)に透析に関しての説明を受けました。また、緩和ケア病棟では、ちょうどコンサートが開かれており、患者さんたちの穏やかな顔が印象的でした。マタニティ教室の様子も見学させていただき、ご夫婦で参加されている方もおられました。最後には、辻村副院長にご挨拶いただき大津市民病院をあとにしました。
大津赤十字病院では、廣瀬院長から、滋賀医科大学とは開学前から深い関係があること、病院には地域医療の基幹として、地域医療支援病院、地域がん診療連携拠点病院、救命救急センター、総合周産期母子医療センター、基幹災害医療センター、臨床研修指定病院等の役割を併せ持ち、殊に、今回の東北・関東地方における大震災による被災地へはいち早く医療救護班・DMATを連続して派遣されていること等についてご説明いただいた後、100周年記念DVDを視聴させていだきました。続いて、土井副院長と伊吹看護部副部長から、本学卒業後、同院に勤務している若い医師(平成22年卒・孫 永基さん、平成21年卒・財間 千景さん)と看護師(平成21年卒・森野 有香さん)の紹介があり、各先輩から後輩達にとして、働きがいや医療について思うこと等について、ご説明いただきました。その後、2班に分かれ、岡本副院長らの案内で、救命救急センター、備蓄倉庫、NICUを見学させていただきました。いずれも県下に誇れる施設・設備との説明もあり、一同納得の内容でした。
大津赤十字病院にて
今回の研修もまた、たくさんの方々のご協力によりとても有意義で、学生達が地域の医療や今後の進路を考えるうえで貴重な体験となりました。
この場をお借りしてお忙しい中、ご協力いただきました訪問先を初めとする皆様方に、厚く御礼申し上げます。本当にありがとうございました。